弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

実力と運について

弓道において運とは何か、実力とはなにかを考えたことがありますか?

 

前に読んだ漫画の一節をふと思い出してこの記事を書こうと思いました。

 

漫画「3月のライオン」を読んだことがあるでしょうか。

将棋の世界で15歳でプロ棋士となった主人公とさまざまな人とのドラマを交えた青春(?)漫画です。

 

ネタバレにもなりそうなのであまり詳しくは書きませんが、その漫画の中に土橋九段と言う棋士が出てきます。

彼は現名人である宗谷名人と同期で、少年時代からのライバルです。

 

宗谷名人は異次元的な将棋の天才として描かれていますが、対照的に土橋九段は努力して登り詰めた棋士として描かれているように感じました。

そんな土橋九段を表現する台詞として次のような言葉が出てきます。

 

 

「(土橋九段は)はなから持って無い運やツキはこの先失くすことも無い、そう言う棋士は不調やスランプにも縁がない。」

「(土橋九段の)努力の凄まじさを見せつけられた。」

※引用:3月のライオン(9) / 羽海野チカ(白泉社)

 

 

3月のライオンは色々な名言や格言のようなものが出てくるのですが、このセリフにすごく惹き付けられました。

 

弓道においても努力をし続けたら運やツキなんて関係ない領域に到達できるんじゃないかと思います。

実際、学生弓道を思い返してもそんな領域に足を踏み入れているような人が頭に浮かびます。

 

そして自分もそんな運やツキの関係ない100%実力で中てられるようになりたいと考えています。

 

 

問. 運とはなにか

 

まず、弓道においての運とはなんでしょう。

たまたま調子のいい日とか、勝負矢を弓手で押し込んで詰めること、とかいろんな答えが出ると思います。

ただそれは主観や感覚の問題です。

 

私が考える運とは、矢所の分布の広さそのものだと考えています。

わかりにくいので、ひとつ例え話をしましょう。

 

最近はソーシャルゲームでいわゆるガチャと言うものがありますね。

運とはそのガチャで"いい引き"をする確率だと考えています。

 

・出現確率

★★★:1.0%

★★    : 12.0%

★       : 87.0%

 

もし、この出現確率でガチャを引くとしたら100回引いても★★★が1度出るのは約63%です。

(100回引いた時の★★★の出現確率は

1-(0.99)^100≒0.6339..

以上)

★★★の出現確率は1%なので100回引けばだいたい1回出るということはありません。

 

弓道においても、矢を一回放つ事に的に的中する的中確率というものがあると考えています。

これを100本繰り返して実際に中てられた本数が的中率となります。

 

運とは、自分が意図的に作用できないこの的中確率の中るはずの確率のことだと思います。

 

では逆に実力とはなんでしょうか?

 

 

問. 実力とはなにか

 

先に答えを書くと実力とは運をあげるために意図的に★★★の出現確率をあげるための努力や研究、実行力だと思います。

 

もし、仮に★★★の出現確率を1%でもあげることができて、★★★の出現確率を2%とした時、100回ガチャを引いた時に1度でも★★★を引く確率は約87%まで上がります。

(100回引いた時の★★★の出現確率は

1-(0.98)^100≒0.8700..

以上)

 

この確率を限りなく上げて行くことで、運そのものを意図的に設計することができます。

 

そうして努力していく過程で、運と言う不確定要素を予想可能な要素にまで落とし込み、完全に努力による実力で勝負するという領域が見えてくると考えています。

3月のライオンでは土橋九段は運やツキを持ち合わせていないと表現されていますが、それは運やツキすらも超えた努力と研究をとにかく真面目に続けてきた結果を表していたんだと思います。

 

 

問. 弓道における実力とは

 

弓道において実力とはなんでしょう。

もし同じ道具を使って、環境、立ち位置、狙いなど全ての条件を寸分狂わず引いたとしたら、それぞれ独立した事象の1本は的心を中心とした矢所と言う出現確率を持つとも言えます。

 

ここからは厳密に正しいことは言えませんが、もし道具が上手く作用していれば矢は的心を中心として下のような2次元に広がるガウス分布に近い出現確率を持つと考えられます。

(実際は身体的心理的誤差や重力、空気抵抗、摩擦、道具の個体差などによって歪んだ分布や偏りも発生すると考えられる。)

 

f:id:timefliesblues:20200628023939p:image

引用:正規分布 - Wikiwand

 

実際にどんな分布になるのかは、シミュレーションなどができる物理系の方でないと分からないと思います。

しかし、こういった物理現象において、おおよそガウス分布に近似されるため仮定として話を進めます。

 

改めて弓道においての実力とはこの2次元の分布の広がり(分散)を小さくすると言うことです。

 

こと弓道においては、このガウス分布こそが先程のガチャの出現確率に相当すると考えることができます。

1本の矢がこの出現分布に従うとして、仮に100本とも狙いが的心を捉えていたとしても的枠の外にはみ出る確率が1%であるならば63%の確率で100射皆中のチャンスを逃すことになります。

ただし、的枠からはみ出ているのが1%と言うのは国体選手以上にかなりすごい人の理論値す。

 

弓道の競技としての視点から考えた時、この出現分布(ガウス分布)が小さく的枠の内側に収まるようにすること事が最も重要だということが直感的にもわかると思います。

 

さらにいえば、狙いが全て的の中心を正確についていると言う仮定をおきましたが実世界ではそうは行きません。

緊張による肉体面や心理面からも正確に狙い通り狙うことも当然必要になってくると私は考えています。

 

 

考. 矢どころの確率分布を支配するものとは何か

 

矢どころは何をしたらどう変化するのか考えたことはありますか?

 

感覚として弓手の押し方でもいいし、道具なら矢尻を重くするとかなんでもいいと思います。

実際、人によってその考え方は違うと思うし、それだけアプローチは無限にあります。

 

多くの人はAをしたらBが起きるという対応を経験的に得て再現することを繰り返しています。

これを練習と呼んだりします。

 

この経験的なものも重要ですが、 矢どころの確率分布を支配するのはやはり道具です。

道具の組み合わせや特性によってピタリとはまると、狙ったところに確実に飛ぶような相性を生み出す事があると考えています。

それは矢の重さ・長さ・硬さ・質量バランス、弓の長さ・キロ数・復元特性などの組み合わせです。

おそらく矢の長さを1センチ変えただけでもこの矢所の分布は変化すると思います。

(根拠は示せませんが、矢の長さを変えながらまとまった本数を引いて矢所を集計出来ればある程度定性的な結果は得られるかと思います。

どなたかやってくれませんか…笑)

 

こういった道具が揃っていれば、次に重要なのは身体です。

どんなに正確に矢が飛ばせる道具があっても、狙いが毎回ずれたり、身体が緩んで飛ばし方がかわってしまうのでは全くもって意味不明な矢所になると思います。

実際に得られる矢所とは「矢所の出現確率×試行回数」の総和で表現できます。

試行回数を重ねるうちに狙いがぐちゃぐちゃとずれてしまうと言うのは、ある意味手ブレをした写真のようなものです。

しっかり一点を見つめてブレずにシャッターを切った写真のような結果は身体がしっかりできていなければ実現できません。

 

たとえ話ではわかりにくいので、先日自粛が開けて数ヶ月ぶりに的前で引いた時の矢所を実例にあげて少し話をします。

 

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※的前で引いた矢所を集計したもの

 

2本だけ言い訳をさせてもらうと、馬手のギリ粉が滑って左上に飛び出た矢と的前で1本目に引いて狙いの高さがわからず下に抜いた矢がありますがおおよそ矢所はまとまっています。

 

 

久しぶりではあったものの主観としては、おおよそ一様に的心を狙って引けたので、横方向だけで見ると裾が左右に広いガウス分布のように見えます。

簡単にいえば中心付近が密で端が疎であるということです。

上下方向に見ても同様にガウス分布になっているように直感的に分析できます。

(ただし狙い(的心)よりも下に分布しているので、ツケを少しあげるべきですね。)

 

ここで気になるのは上下と左右で広がりが違うことです。

 

もしも、左右が上下と同じくらいの裾の広さならばもう少し的中率は上がるはずです。

(下の図参照)

 

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※こうなっていたらいいなぁと言う矢所

 

私が思うに弓道の上達のための思考方法とは、この左右の分布の広がりの原因はなにかを分析して狭めることです。

そのための研究や努力、実行力が結果に繋がったものは確かに実力と言えるのではないでしょうか。

 

この確率分布を支配して、自分が意図したように矢所をまとめて、それを何万本でも繰り返すことこそが私の今見ている理想です。

 

もちろんそのためには先程の例外の2本が出ないように気合いを入れて練習する必要が不可欠ですが。

 

せっかく実例をあげたので現在までの経験や知識などを鑑みて、この左右の広がりを考察するならば矢のスパインの不足だと結論づけます。

 

14キロの伸の粋で矢はミズノSST80-20BMです。

他には重量オーバーのジュラ矢とメルカリカーボン(メルカリカーボンの謎 - 弓道考察モノローグ)しかなく、今のところ1番いい組み合わせとして使っていますがSST80-24くらいにスパインが強ければ左右の分布は上下と同じくらいにはまとまるんじゃないかと思います。

分布がぐらつく原因はアーチャーズパラドックスだと思います。(基本の"き"、アーチャーズパラドックス - 弓道考察モノローグ)

もちろん、矢を購入して検証は必要ですがいかんせんお金が無い笑

 

あとは久しぶりだったので狙いがグラグラと上下左右に等方向にズレていたと思うので、こればかりは毎日矢数をかけないと上達は見込めない気がします。

 

今回は弓道自論のようになってしまいましたが、なにかインスピレーションを感じていただければ嬉しいです。