弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

「弓道読本」を読む(1)

一応ページ番号などと対応が取れると良い場面もあるかと思うので記しておくと,中央公論新社出版の2012年再版発行(初版2006年)のものを私は読みました.
あらかじめ断っておくと,弓道読本は正面打起こしに重きをおいた内容となっています.

序文(p.1-p.2)

序文は「詳説弓道」の著者でもある小笠原清信氏によるものである.

近年従来の弓術に基づいたものではなく,体育学に基づいた弓道を見直す時代がきている

近代の弓道では「自然の流れに置ける動きの美」というものを科学的に追求するのが大切であり,弓道読本は著者である唐沢氏が長年取り組んできた研究がまとめられている.
そして,この内容は将来の弓道に多大な示唆を与えるものとして功績が極めて大きいと評している.

そのため新しい時代に生きる弓道家に一読を薦めたい

という言葉で弓道読本の序文を締めくくっている.

まえがき(p.3-p.5)

前書きでは唐沢氏の来歴とこの本が何を目指すのかということを書いている.
著者は日置流印西派に入門していたが,その後弓道を修行する者は流派を問わず小笠原流を学んでおくべきだという考えから小笠原流でも弓道を行い重藤弓の免許を受けたということを述べている.
このことは後に手の内に関する記述で関わってくるが,斜面打起こしからもインスピレーションを受けながら正面打起こしで成果をあげる手の内の整え方を提案している.

"自然体"の射法こそが現代のあるべき正しい射法である

印西派における射法というもの左肩を下げて,馬手肩をあげて固める形であり,結果として生まれる小離れの射法が良しとされるという.
しかし,このように流派による射法ではなく近代では体育としての弓道が求められている.
著者は弓射に作用する人体の生理的作用に適した射形というものを研究した結果,人間に本来自然に備わっている人体の働き,生理的,心理的作用を基礎とした射法をまとめることができたということである.
これこそが自然体の射法であり,その研究成果が大方の参考となれば良いということで締めくくっている.

あるべき現代の弓道(p.12-p.13)

すべて飛び道具の主たる目的は,目標に射当てることにあるのは今も昔も変わっていない

今も昔も的中を生み出すのが弓道であるが,単に弓を引いて的に当てれば良いというわけではないことを著者は強調している.
そして現代の弓道において基本であるのは"縦横十文字の規矩"であるということを研究の結果から明らかになったと述べている.
もちろん全日本弓道連盟弓道教本からもこのことはもっとも重視すべきことだと解釈できる.

自然の流れにおける動きの美,これを生み出すのが"自然体"の射法なのである

しかし縦横十文字が形成されるためには筋骨と気息の働きなど,形の美しさだけでなく内容が伴わなければ生まれないという.
これらが自然のうちに行われることが美しいのであって,これこそが弓道における美であり,その美を生み出すのが自然体の射法であるという言葉で締めくくっている.

昔の射法(p.14-p.22)

弓道は常に進化してやまないものでなくてはならない

これは弓道教本からの引用であるが,この本の中でも引用されている.
著者が学んでいた日置流印西派も元は日置流という一本の親木から分岐したものであり,常に変化を続けてきた結果様々な流派が生まれたということを言っている.

射の眼目は,自然の理を動作の上に表現することである.故に自然を無視しては射は成り立たない

現代における弓道の目的は学生にとって体育的となり,精神的愉悦に浸ることのできる---高い指標を持つものであるということだ.
そのため昔の射法と現代の射法で目的が全く異なると強調している.
弓道読本で重要なのはあくまでも現代弓道における自然体を習得するためにはどうするべきかということだ.

ここまでのまとめ

ここまで私の解釈で重要部分をまとめたつもりだが,要は自然体の射法を会得することが現代弓道における目的であるということが重要だと感じた.
私のブログで書いている内容はこの弓道読本における自然体の射法から始まっており,それに加えて弓矢がどのように動作するべきかということを組み合わせることで,より的中精度を高めるための考察を展開しているつもりである.

ここまではほとんどオリエンテーリングなので本質的な内容を扱っていないが,これからこの自然体の射法について掘り下げられていくことになる.
図書館やスポーツセンターの書籍に弓道読本がある方はぜひ一読をお勧めします.