弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

懸口十文字と弽の挿し方から取懸けについて

今回は弽(以下ユガケ)の構造から話を初めてそこからどう使うべきかと言う説明をしたいと思います。

 しかしこれから記述することは完全に私見についての話だけですので参考にしてのユガケの破損についての責任は負えません。

 

 私は弓道を始めてどうもユガケの挿し方や使い方が曖昧で人により違うことが不思議でしょうがなかったです。

教本にも参考書籍にもあまり明確に書いてあることはなく、ユガケを作っているお店に問い合わせたこともありましたが使う人それぞれの使い方があるからこれと言ったやり方は無いというのが回答でした。

 

それから二年近く情報収集をしながら試行錯誤して悩んだ末に一番合理的だと思う付け方に落ち着くまでに得た知識などと絡めつつそのポイントを説明しようと思います。

 

まず、ユガケにはいくつか種類があります。

諸がけ、よつがけ、みつがけ、和帽子、ちょんがけ、などなどありますが今回は私が使っていた堅帽子のみつがけ(よつがけ)についてのお話になりますのでご了承ください。

 

まずは私が最終的にたどりついたユガケの挿し方を紹介します。

 

①下掛けをつけた手にユガケを挿し、親指人差し指、中指をしっかり奥まで入れます。


②このとき帽子の弦溝のある面と親指の腹の面が平行になるようにしておきます。

f:id:timefliesblues:20180106123901j:image

※向こう側が帽子の先端

上の図の左側のように親指の腹をベッタリとつけると良いと思われます。


③腕の骨と帽子が成す角度はしっかり0度、つまり肘から親指までが真っ直ぐになるようにユガケの向きを調整します。

f:id:timefliesblues:20180106124018j:image


④このとき親指を真っ直ぐにして猫の手(グー)にしておきます。

(これは親指が真っ直ぐならば取懸けの時の形でも良い)


⑤小紐は乳(ち:小紐の折返しの輪)が無理に引っ張られない程度にしっかり回して締める。

 

以上が私の行き着いた手順です。

 

普段言われていることと異なるかもしれませんが、それらも順を追って説明しながら解説したいと思います。

 

私はこれまで2つのユガケを使用しましたが、1つ目は小山弓具で購入した入門用の2万ほどの堅帽子のみつがけで一年半ほど使用し、2つ目は征矢弓具の束離の堅帽子のみつがけを手形を取り購入して使用しています。

先ほどよつがけとも記述しましたが、使用しているのはみつがけのみです。

しかし、これらはすべてよつがけにも共通することですのでおそらく参考になると思われます。

 

初めて私がユガケを使用していて疑問を感じ始めたのは弦溝が帽子の方向に対して斜めについていることに気がついた時でした。

 

詳しい方ならそれが鎹(かすがい)もしくは筋交い(すじかい)などと言われるものだとご存知かもしれません。

 

しかしそれ以上に極端に弦溝がカーブしているのがとても気がかりでした。

心配になった私は教えていただいて方の助言もあり都内のカケ師の方に見ていただきました。

そこで初めて斜めは始めからなっているものと知り、ただそれでもそれに加えて溝の下側が引き方で削られている事を指摘していただきました。

そこからどう使うのが正しいのかと言う悩みが始まったのです。

f:id:timefliesblues:20180106123319j:image

参考:下の方にあった溝が潰されて変形してカーブがきつくなっていました。

 

あまり深く考えた方はいないかもしれませんが皆さんはどのようにユガケを挿して使っていますか?

 

挿すときは帽子と腕の成す角度は?

小紐はゆるく締めるのか?

帽子の中で親指はどうなっているか?

挿すときは取懸けの形を作るか?

考えるほど、組合せが無限大でその方法の曖昧さにとても困惑しました。

 

もののせいにするわけではありませんが、確信をもって装着感の違いから思ったような力のかかり方と異なる引き方になる違和感のある挿し方と言うのが時々ありました。

そして再現性の求められる世界でユガケという不確定要素は本当に悩みでした。

 

そこでまずなぜ弦溝が削れたのかを考察したところ、会の時に帽子の先が的方向ではなくやや下を向いている事に気が付きました。

 

帽子が下に向くと溝の下側のみに力がかかり結果的に溝が削れていくというわけですね。

 

ここから私は引き方を矯正しました。

 

これが一番良くない判断でした。

長い月日をかけてもこれでは左右のバランスはいつまで経っても治りませんでした。

 

原因はユガケの挿し方だったのですから。

 

ユガケを挿すときに腕の向きに対して帽子が15度から20度ほど角度をつけて挿していたからです。

f:id:timefliesblues:20180106125041j:image

 

これでは水平に引き分けを行っても自然と帽子が下を向くのは必然です。

 

結果的に弦溝を削る引き方です。

 

仮に向きを矯正しても指先で弦をつまむように挟んだ引き方になりますので合理的とは言えません。こういう場合残心では手はパーかチョキの形になります。

 

ここから腕と帽子が成す角度は0度という事が決まりました。

 

ユガケを挿したときは0度でも結果的には射を運ぶうちにユガケがずれて10度から15度の角度を会で形成しますので見た目もかなり自然な帽子の向きができます。

これで③番の理由が説明できました。

 

次に④番の説明です。

一般的にユガケを挿すときは取懸けの形といいます。

なぜでしょうか?

私は答えを知りません。

誰も答えを知りませんでした。

 

これをすると自然と帽子が下を向いてユガケが挿されてしまいます。

 

私が考察するに、新しいユガケを買ったときはまだ革が硬く手になじまず取懸けがうまくいかないので、形を慣らすために取懸けの形で挿すと言うのが習慣として残ったのではないかと思います。

おそらく初めての人は誰でもそう言われますので、今は先生の方でもそう教わったと次に教えると思うからです。

 

しかし、革が馴染んだ後でもそれを続ける必要は無いと思います。

 

もしやるべき形があるとすればそれは残心の際のグーの形です。

 

行射の中で一番自然体なのはそこなのですから。

そして、この形こそが帽子を理想的につけられる角度だと言えます。

こうして私は親指を伸ばして他の指を軽く握り込んだ形でユガケを指すようになりました。

 

ただしポイントは帽子が腕と平行ですのでそれが出来るならば取懸けの形で挿しても問題はないかと思います。

 

そして②番の説明です。 

しかし、この話をする前に今回のもう一つのメインテーマの懸口十文字の話をしなければなりません。

 

皆さんは名前は知っているという人も多いはずです。

しかし弓道を始めてからこれほど曖昧な事に出会ったことがありませんでした。

教本には五重十文字の "弽の拇指と弦" が成す十文字と言う一言で済まされています。

 教本にはおそらく懸口十文字言う名称は出てきませんが、同じことを言っているのは確かです。

書籍の現代弓道講座によるとこれは八節の中でいつ出来ているべきなのかという議論が長年されてきたといいます。

取懸けの際には意識すればできますが、会の時にと言うと弦は引かれて直線ではなくなっています。

しかしある書籍では会の時に形成されているものと書いていたり、取懸けの際の帽子と弦の角度が垂直になることだと書いてあるものもあります。

これではあまりにも一貫性がなく混乱の元ですね。

 

私の結論は取懸けから離れの直前まで弦溝にピッタリと弦がくっついていることこそが懸口十文字の真意だと言うことです。

 

さらっと聞く限り当たり前のことですが、より詳しく説明しましょう。

 

もしも "取懸けから離れの直前まで弦溝にピッタリと弦がくっついていること" ができていないと不自然な傷がいくつか出来ていると思います。

そのいくつかをイラストで説明していきます。

 

①捻り革についた矢の痕が帽子と平行ではない

f:id:timefliesblues:20180106123240j:image

 

②腹革の矢を取懸ける側が削れている

 f:id:timefliesblues:20180106123248j:image

 

③弦溝の矢を取懸ける方とは逆側が変形している

f:id:timefliesblues:20180106123319j:image

 

主に以上の症状が出ている場合は懸口十文字がうまくできていないと思われます。

 

①だけの場合は帽子にかける人差し指と中指をもっと先端の方にかけると改善されると思われます。

しかし、こうなる方は帽子が取懸けの際に下を向いている事が多く③の症状も現れることが多いと思います。

 

もし、③の状態になってしまったら度合いにもよりますが、ある程度引けても使い勝手が悪いと思いますので使い方を改善して新しいユガケを買うのも一つの選択肢かもしれません。

 

②の場合はユガケの中の親指と手の位置を変えると改善できるとおもわれます。

 f:id:timefliesblues:20180106123901j:image

※向こう側が帽子の先端

 

おそらく②のようになってしまう人は右のイラストのように親指が帽子の中でやや反時計回りに回転した状態でユガケを挿す癖がついてしまっていると思います。

 

この挿し方だと弦溝に対して斜めに弦がかかり離れの瞬間に矢を取懸けている側にのみに力が加わり帽子の腹をこするためにこの痕がつくと思われます。

f:id:timefliesblues:20180106130845j:image

※向こう側が帽子の先端

 

離れながら擦る位置は帽子の中心より上の方。

f:id:timefliesblues:20180106123248j:image

 

 

ではさらに何を意識すれば良いのでしょうか。

 

それは弦溝の山のピークで弦を懸けて、常にそこを意識しながら行射することです。

 

f:id:timefliesblues:20180106131356j:image

星のマークが溝の山のピークです。

 

f:id:timefliesblues:20180106131420j:image

※向こう側が帽子の先端

 

 ここに弦をあて続けることが懸口十文字の真意ではないでしょうか。

 

そして親指の腹はこのピークの位置をしっかり感じられるようにベッタリと帽子の中の弦溝のある面と平行な面にくっつけるのがポイントだとワタシは考えています。

 

 以上が私のユガケに対する考えの一部についてでした。

ユガケを扱う上でユガケを大切にするという事を意識すれば自ずと使い方がわかると思います。

すなわちユガケを破損させず、手入れなどをきちんとするということです。

 

ユガケの腰を揉むなど言語道断。

 

腰は硬い状態で使われるために意図的にカケ師の方が作ってこられたのですからそれには必ず意味があると思います。

というのは腰はバネの役割をして親指が的方向に向くためのサポーター的な役割を果たしていると私は考えるからです。

 

もちろん節抜きのユガケなどありますが、腰を揉むくらいなら節抜きのユガケを初めから購入して使うのがカケ師への敬意でもあると思います。

 

ユガケを大切にということを心に置いておけば何が正しいのか紐解くヒントになるはずです。

帽子が削れるならば削れない使い方があるはずですし、腰が折れるなら他の引き方もあるはずです。

 

もちろん時として人が作ったものですのでユガケの成形で不良品に近いものもあると思われますがそれを見抜いて使い方を工夫したり探究する事も弓道の醍醐味だと私は思います。

 

関連: http://kyudo-monologue.hatenablog.jp/entry/2018/03/10/201849

 

参考書籍:

「詳説弓道」 

弓道読本」

「弓執る心」

「現代弓道講座」

弓道指導の理論と実際」

「技術と理論の弓道