弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

押し方による矢飛びの軌道論

今回は矢の挙動について考察しながら前に記述した弓の振動の節と節を結んだ軸がどう矢飛びに影響するかを書いていきます。

 

 弓道はなぜ下から三分の一を持つか - 弓道考察モノローグ

 

以前、和弓には振動の節が2つあるという事をお話しました。

今回はその位置関係、すなわち押し具合がどう矢飛びに影響を与えて、どのような飛び方の違いが現れるのかということを書きたいと思います。

 

弓道の十文字と物理学の計算手法 - 弓道考察モノローグ

 

そして今回はこちらの記事とも関係したお話となりますので、ぜひとも目を通していただきたいです。

今回は物理学の斜めの力を縦と横の力に分離して考える手法を用いりますので、この記事の具体例ということになります。

 

それでは少々復習も兼ねてこの画像を見ていきましょう。

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 以下は以前の記事の発言である。

"時々私が見かけて気になるのは上の節をかなり的方向へと傾くほどうわ押しをかけている引き方です。それでは、上下の節の位置関係的に弓返りの回転軸が大きく的方向へと傾くため離れの瞬間の衝撃が大きくなり矢飛びに大きく影響を与えると考えます。"

と書きました。

これについて十文字と絡めて私なりの考察を主張させていただきます。

 

私が理想とするのは打起しから残心までこの上下の赤丸で囲った振動の節が常に地面と垂直となる引き方です。

 

ですがまずは対比のために上押しをかけて、節と節の間の線が会では垂直で残心では前傾となる引き方がなぜいけないと考えるのか説明しましょう。

 

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今回は会の時に節と節を結ぶ線がきちんと地面と垂直であった場合を示しています。

そして、残心の際の節と節の位置を緑の円と補助線で表現しました。

 

今回は会の時に節と節の補助線は地面と垂直ですが、実際には会の時点ですでに緑のラインほど前傾になっている射手もよく見かけます。

そういった方はほとんどと言っていいほど矢が地面と平行ではなくやや上を向いており、とても鋭い矢勢が出ています。

ただ、それでは数ヶ月あいて弓を持ったときや歳をとり握力が低下したとき、試合で緊張したときなどに思い通りの場所に矢を飛ばすことが困難になる可能性があると考えます。

 

なぜなら上押しをかけるために過剰な力を利用して引いているためにその影響が後々になってから現れると思われるからです。

 

では、なぜそんなことを言えるのか?

 

それは、物理学の手法で説明した縦と横の力の分離による手法でわかります。

 

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的方向へ押すときの腕から弓へかかる力をFとして、会から残心にかけての傾きφを縦横分解を当てはめてみると、、、

 横方向への力F cosφと縦方向への力F sinφに分解される事がわかります。

 

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この2つの力について考察を深めると、、、

矢が的へ当たるためには弓が的方向へ水平に押す力が必要であるため、その力はF cosφであることがわかります。

 

しかし、F sinφは本当に必要でしょうか?

 

私の答えは必要ない、です。

 

いえ、言い方に語弊がありました。

たしかに、縦方向の力は必要です。

それは残心で拳が平行に横方向へ伸び合い、腕の自重と弓をその場に保持する力つまり垂直抗力です。

 

しかし、問いかけのF sinφは真下へ落ちる向きの力であり垂直抗力を別に考慮した力学系の話であり、弓を前傾させるためのトルクであるのでこれは必要がないと言うのが私が厳密に言いたかったことです。

 

もしこの力が存在した場合、矢が的にあたるまで受ける縦方向の力は地球の重力加速度とこのF sinφということになります。

 

そして、このF sinφは変数φに依存し、再現性つまり的中の信頼性は射手の微妙な上押し加減や肉体のコンディションにかかっていると言えます。

しかし、肉体は日々変化し、筋肉は歳を取るごとに衰え、緊張により微妙な力加減は困難となります。

そうした場合かなり正確に同じ縦方向の力を弓矢に加えるのはかなり困難なことではないでしょうか。

 

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もし、仮に弓が会と残心で常に地面と垂直に2つの節が揃っていた場合はφは0になります。

すると、縦方向はsinφで表されますがその値は0、すなわち弓と腕の自重を保持する垂直抗力以外は全て矢を水平に押し出す力に使われると言えるのです。

 

ここまでが上押しが矢飛びにどのような影響を及ぼすかという話でした。

 

 

次に矢飛びの軌道への影響を考えてみましょう。

 

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ここに上押しが強い軌道の青い矢飛び軌跡と中押しの軌道の赤い軌跡を表現しました。

 

もちろん上押しをかけた場合はF sinφが軌跡の表現に作用するため若干膨らみのある軌跡となります。

問題はこれらの膨らみの範囲です。

これから表示するのは私がもしそれぞれの引き方で引いて籐の狙いで同じだけずらした場合の上下のレンジを表現した図です。

 

①上押しが強くかかった場合

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②中押しで引いた場合

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これらを見てなにかピンと来ることはあったでしょうか。

 

どちらがより的中精度を上げられるかは一目瞭然ですね。

 

もちろん私が誇張した表現をしたかもしれませんが、理論的にはこれほどレンジに差が出ると思われます。

 

今回伝えたかったことは以上となります。

 

 

ここまでの主張をまとめると、射全体を通して弓の振動の節たちが常に地面と垂直になるように引くことで、弓手の押しの力は水平方向にのみ毎度同じ力がかかり再現度を上げることができ、中押しで的のさらに奥まで伸び合う事ができればほぼ的の枠の中へ通過させるほどの技術を得られるはずであるということでした。

 

もちろん弓道の矢は完全な放物線を描かないといったことや、力学系の実際に加わる力をかなり省略した部分もあったため科学的根拠としては今回の主張は不十分であったと思います。

しかし、それでも和弓を使いこなすためのコツのようなものはたしかに物理学からヒントが得られると言うことはわかっていただけたと願っています。

 

これらの知識を使いこなすためには手の内など条件が整う必要がありますが、少しでも考え事のヒントになればうれしいです。

 

 

追記(2018/6/21)

竹弓など弓返りの速度が遅いものはややうわ押しの方が平行方向に均衡が取れた力が矢に加わると思われる。

しかしカーボンなどの合成弓は竹弓に比べてかなり早く復元するため、うわ押しをかけると矢は下に飛ぶと思われるのでほぼ水平方向の中押しが矢所をまとめるには良いと思われる。

 

追追記:

http://kyudo-monologue.hatenablog.jp/entry/2018/07/01/101636