弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

弓道はなぜ下から三分の一を持つか

結論から言います。

一番振動を抑えられるからです。

 

的中精度にも弓のブレが関係しているため結果的に弓の下から三分の一を持つことにメリットがあると考えられます。

 

今回話したいのはその科学的根拠と弓返りについてです。

 物理学を学んだ人、学んでいない人、おそらく半分ずつほどいらっしゃると思いますができるだけわかりやすく説明出来るように心がけます。

 

物理学は力学、熱力学、力学的波動、電磁気、光学、量子力学といくつかに分かれていますが弓道はそのうちの力学と波動がポイントになります。しかし、波動と言われるとピンとこない方もいると思います。

 

波動の分野は例を上げると、音があります。

 

振動したものは音を発します。

振動とは波動の震源とほぼ等しいものと考えて良いです。

 

スピーカーの表面は細かく振動して空間の分子の粒を震わせます。

空気を仲介した波動を鼓膜が音という情報として受け取ることで音が伝わるのです。

 

それはまるで一番端のドミノを倒したら次々と隣のドミノを倒しながらゴールまで倒れるように。

 

そして、ゴールのドミノが再びスタートのドミノを倒す、これを繰り返して力が伝わります。

 

そして、弓と矢は剛体ではないので常に振動しています。

 

アーチェリーパラドックスでは矢が蛇の様に蛇行運動することを知りましたが、その運動の矢だけに注目すると鏃と矢筈を節とした基本振動であることがわかります。

 

基本振動とは下の図の一番上の振動を言います。

まるで縄跳びの運動のようですね。

縄跳びの運動を正面から見ると地面に当たるたわんだ部分が上下運動して見えると思います。

これが単振動です。

 

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引用【http://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/wave/koyuu/genn.html

 

基本振動が2つ組み合わさると2つ目の二倍振動、基本振動が3つになると三倍振動、、、

きっと布団を両手で持ってバフバフとしたときにいくつも波ができるのを経験したことがあると思います。

これが〜倍振動です。もう大丈夫ですね。

 

小さな基本振動(単振動)が組み合わさった運動が波動の基本となります。

 

矢の詳しい話はまた今度。

今回はなぜ弓の下から三分の一を持つのかでしたね。

ここまでくればピンと来た人もいるでしょう。

 

弓の挙動とは、2つの節のある振動運動だということです。

 

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引用【http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/2-2-0-0/2-2-2-2kityuunosinndou_hu.html

こちらは管の中の空気の疎密(振動)を表した図ですが、真ん中のイラストはまさに和弓ですね。

 

オレンジの実線と破線は疎な部分と密の部分を表しており、これがまじわる部分を"振動の節"と呼びます。

疎と密はドミノで言う向こうに倒れる流れと、こちらに倒れてくる流れです。

これがまじわる部分は力がプラスマイナスゼロとなり空気分子は位相が変化しないように振る舞います。

ちょうど逆方向に進むドミノがぶつかって拮抗する状態です。

 

これは弓道にも当てはまることで、弓の下から三分の一と上から三分の一は"振動の節"となっているため、昔の人は経験的にここを掴むことで離れのときの衝撃を和らげる知識を得たと考えられます。

 

ちなみにアーチェリーの場合はどうでしょう。

 

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引用【http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2012/feature/kagaku/20120728-OYT8T00384.htm

 

アーチェリーの弓はなんと基本振動です。

 

しかも振動の節ではなく、一番大きく震えるところを掴んでいます。

これは、どういうことでしょうか、、、

 

実はアーチェリーの弓にはスタビライザーと呼ばれるものが付いており、これが振動を分散吸収するのです。

このスタビライザーは弓のトルクと言う回転方向の衝撃も吸収するようにできています。

これは和弓の弓返りと同じ様に洋弓も弓返りのような力が働くことを示しています。

和弓と洋弓は似ていないようで、やはり同じ原理で動いているんです。

 

ここまででよくわからないよ! 信じられないよ!という方はぜひこちらの動画をご覧ください。

https://youtu.be/fEVZxkafOOs

 

これまた私の大好きな所さんの目がテン弓道の回です。ふんわりとしてはいますが、たしかに要点がよくまとまっています。

理論はそこまで詳しく解説されているわけではありませんが、視覚的理解ができると思います。

 

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透明な箱に万力を付けた装置に弓を挟めるような構造の装置を用意してきました。

 

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箱のなかには色水を入れても衝撃が強かった場合この水が溢れてしまいますね。

 

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まずは下から三分の一を固定した場合です。

↓リリース

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 かろうじてコップの水は溢れることはありませんでした。

 

それでは真ん中の場合ではどうでしょう。

 

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 準備完了です。

↓リリース

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水が衝撃で溢れてしまいました。

 

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 以上からわかるように経験的にも弓には振動の節があることが確認できたと思います。

 

 ここからなにが言えるのか、それが最も重要です。

 

言うなればこの振動の節は位相が変化しない様に振る舞うのはいまの説明でなんとなく分かったと思います。

持つ部分を意識することは普通だと思いますが、ワタシは下から三分のニの位置が射全体を通してどうなっていればよいかということが大切だと考えています。

 

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 時々私が見かけて気になるのは上の節をかなり的方向へと傾くほどうわ押しをかけている引き方です。それでは、上下の節の位置関係的に弓返りの回転軸が大きく的方向へと傾くため離れの瞬間の衝撃が大きくなり矢飛びに大きく影響を与えると考えます。

 

もちろんそれを手の内で抑制できるならばそれでも良いと思いますが、ワタシが理想とするのはより無駄な力を使わない射です。

 

私はこの上下の節が常に地面と垂直になるように引くとき、最も美しい離れが出ると考えています。

 

そこには機能美が宿りますし、物理的にも構造的にも合理的でもっとも再現性の高い矢飛びが期待されると思うからです。

 

もし弓手の手のひらを見ていくつも豆があったり皮が向けてしまうなど怪我の多い方は弓ともう少し素直に向き合っても良いかもしれません。

 

ここまでが本日の内容ですが、まだ私には弓の振動の節について疑問な点があるためそのことについて記述したいと思います。

 

どうも弓をよくよく観察していると本当に下から三分の一なのかと疑問に思う瞬間があります。

節と節の間がどうも上下の長さより若干ですが短く感じてならないです。

ただ、仮に距離が違っても振動の節であることに変わりはないのでここまでの話が間違っているわけではありません。

 

私の一つの仮説として、弓の上下は自由端と固定端どちらともとれないような状態を取っているためにまるで開口端補正のように振幅が上下と中間で変化しているのではないかと考えています。

 

今後論文などなにか答えが見つかれば良いな、といったほどの疑問でした。

 

参考書籍:

弓道指導の理論と実際」

「新・物理入門」

 

 

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追記:2019/3/21

実際にスローモーションで撮影して画像合成する機会があったのでその画像を掲載します。

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弓をうわ押しをかけないように中押しで並行に押し切ることが出来れば弓は上下のはずは的方向に復元され、腹の部分は裏的の方へと復元される様子が確認できます。


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このとき、振動の節を結ぶ線と矢線が十文字に交わるようにバランスをとって引くことが出来れば矢はきれいに並進するのではないでしょうか。

 

しかしうわ押しをかけ過ぎると下の写真の様に弓が復元するときの形状は歪み、握りの部分には相反される方向に負荷がかかります。

このような引き方をしていると20キロほどの強弓はこの部分で折れるという可能性があると私は考えています。


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