弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

基本の"き"、アーチャーズパラドックス

(タイトルをアーチェリーパラドックスからアーチャーズパラドックスに修正しました。2020/7/15)

 

弓道なのにアーチェリーってどういう事だ。

 

ただしい疑問ですが、弓道とアーチェリーは違うと言うのは危ない先入観です。

 

弓道もアーチェリーも同じ現象で矢が狙ったところに飛びます。

科学論文のように完全にそうだと断言はできませんが、できるだけ納得できるようにお話したいと思います。

 

まずはこちらをご覧いただきたい。

私の大好きなSmarter Every Dayのアーチェリーパラドックスに関する動画です。

 

https://youtu.be/O7zewtuUM_0

 

"Hey, it's me Destin and welcome to SmarterEveryDay "と小気味よい挨拶から始まるDestinさんは超高速撮影が可能なカメラでいろいろなものを撮って科学的に考察するアメリカのYouTuber的な方です。

 

今回はアーチェリーでとても精度よく当てる有名な選手の方に協力してもらい、なぜ弓矢でそこまで正確に当てられるのか、何が起きているかに科学的に迫った動画です。

 

そもそもパラドックスとはなにか?

パラドックスとは矛盾という意味であり、アーチェリーにおける矛盾ということになります。

では何が矛盾しているのか。そこから考えていきましょう。

 

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動画では木の幹を弓に見立てて、白い棒を矢に見立てて説明しています。

 私達が"普通"イメージするのは矢は硬い棒状でいわゆる"剛体"の物質です。

剛体とはどんな力がかかっても一切変形しない物質の事をいいます。では、もし矢が剛体だったならばどうなるか。

 

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 弦に押された矢は弓に擦られながらつがえられた方に押し出されて正面の狙い方向には飛びません。

 

世の中には完璧な剛体は存在しないということを知らなければ弓矢をうまく扱えません。

剛体は漫画や理論の世界だけの話なのです。

 

では、実際は何が起きているのか?

 

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Destinさん、今度はふにゃふにゃとムチのような白い棒を持って現れました。

これが本当の矢に近いモデルなのです。

 リリース(離れ)された矢は弦と弓に押しつぶされ湾曲して"しなり"ます。

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弓の復元力により弦はさらに戻り、、、

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いよいよ耐えかねた矢は的方向へと逆方向に"しなり"ながら直進します。

 

その後は矢は蛇のように蛇行運動をしながら、徐々に収束しつつ的へ到達するのです。

 

これがアーチェリーパラドックスです。

矛盾点は狙いとは別の方向に向いた矢が必ず真っ直ぐ進むことから来たと言われています。

 

ここまでが、アーチェリーパラドックスの話です。

 

これがどう弓道に応用されるのか、、、

その前にもう少し、道具について深掘りしようと思います。

 

お話したいのが、矢の硬さについてです。

 

 剛体は存在しないと先程言いました。

しかし、硬さの度合いは存在します。

これをスパインと呼びます。

弓道ではEASTONの矢の規格として(しなりやすい)1913,1914,2014,2015(しなりにくい)などが用いられていますがアーチェリーでは弓が比較的強いためより硬い(太い)2114,2115などが用いられます。

 

スパインは弓の強さに応じたものがあるので、弓具店などの表を参考に購入を考えましょう。

 

スパインが不整合だと蛇行運動が右か左に偏り、一定して狙った場所の左右どちらかに外します。

 

アーチェリーではこれらの道具の精度を強化して的中精度を高めています。

そして、さらに注目したいものがプランジャーというパーツです。

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引用【http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/180855/174367/84255912

 矢をつがえるところに白いプラスチックの突起がありますね。これがプランジャーです。

ここが先程の動画の木の幹に相当します。

この部品で矢の反発をチューニングして毎回同じ様に矢を押し出すことで同じ蛇行運動を引き起こして的中精度を高めるのです。

 

やっと弓道の話を始めようと思います。

まず、疑問としてアーチェリーと弓道は違うという考えが浮かぶと思います。

・矢のつがえる向きが違う

弓道は下から三分の一に矢をつがえる

弓道には角見がある

 

ではなぜそんな違いができたのでしょうか。

 

私が考察して得た結論は2つです。

・矢が顔に当たるか否か

・和弓は三分の一を持つことで振動を抑えることに気づけた

以上の二点です。

次回は「弓道はなぜ下から三分の一を持つか」を書きたいと思います。

 

今回アーチェリーパラドックスと関係するのは弦が顔に当たらないこと。

 

アーチェリーパラドックス弓道でも発生します。

むしろ、この現象を正確に誘発することで高的中率を出すことが可能だと言うのが今回伝いたいことです。

そして再現度の高い射とはその誘発を人為的に制御できる射だと考えています。

 

なぜ、顔に弦が当たらないか?

それは弓道はアーチェリーと異なり右に矢をつがえると言うのがポイントで、アーチェリーパラドックスも鏡写しに対称に発生するということが言えます。

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引用【http://s.webry.info/sp/42875218.at.webry.info/201009/article_1.html

 

すると、弦が頬を打たない方向に蛇行しながら矢を押し出すのです。

アーチェリーでは耳まで引き込むと蛇行方向が逆なので、頬を打ち付けるので口まで引いて実際に目で狙うのではないでしょうか。

そのほうが狙いも離れも合理的です。しかし、腕は打つのでアームガードを使われる方もいるようですね。

 

最後に角見についてです。

弓道では弓返りという和弓独特の技術があります。

「弓が回転して、弓が矢を避けるからまっすぐ飛ぶ」「まるで野球のピッチングみたいに矢を飛ばす」なんて言われたことがあったり聞いたことがある。

むしろそう考えてる人もいるはずです。

しかし、それは誤解だと思います。

 

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むしろ矢が弓に擦られて、アーチェリーパラドックスが発生して蛇行運動をしながら狙いどおりに進むと言うのが私の考えです。

 

弓がリリースされた矢を避けなければいけないと言う考えは、矢が剛体である場合です。

 

そして、弓には籐が巻かれていますが正式には"矢摺籐"といいこれはまさにプランジャーと同じ働きをしていると考えます。

言葉からわかるように矢が擦れる消耗品と言う考え方があったのではないでしょうか。

ですので、籐の矢が当たる部分にテープやロウを塗っている方は摩擦係数が大幅に変化しますので蛇行運動に影響を与えて的中にも差異が生まれると思われます。

 

そして、弓返りは弓を切断した断面の中心が軸となるようできるのが理想であり、角見を練習する際にはそのことが意識できると良いのではないでしょうか。それがまた難しいのですが、、、

 

今回はアーチェリーパラドックスについて話しましたが、これが絶対原則であってこの現象を阻害しない様に離れを出すために道具を整備することが私は弓道を理解する一歩だと考えています。

 

関連: 弓返りの軸は弓の中心か内竹の角か、外竹の角か - 弓道考察モノローグ


新たに弓返りの回転軸についての記事を書きました。
矢が剛体である場合は弓の外竹や内竹が回転軸であるべきですが、実際は弓の中心が回転軸となるように引くのが理想ではないでしょうか。(2018/1/24追記)

 

 

参考ホームページ:

http://www.a-rchery.com/paradox.htm

http://hr-inoue.net/zscience/topics/bow/bow.html

参考書籍:

「みんなの弓道

「現代弓道講座」