弓道考察モノローグ

合い言葉は肩甲骨

矢のチューニング[決定版]

以前、矢のインサートなど調整に関する記事を書きましたがじゃあ具体的にどうしたらいいのかと言うことは書いていませんでした。

 

矢の調整について - 弓道考察モノローグ

 

前回の記事は事実としてシャフトの素材によって硬さが異なり、インサートを入れることでスパインとバランスを取ることが可能だと書きました。

 

それから約2年カーボン矢などについて考察、色々な人の道具と矢飛びを観察をした結果、矢のチューニングに関する考えがまとまったので決定版として記事にしようと思います。

 

 

結論から述べますと、

 

1.矢は長さをまず決める

2.スパインを合わせて、出来るだけ軽い素材を選ぶ

3.素材に合わせて矢羽を選ぶ

4.矢の全質量が弓のキロ数に対応した重さになるまでインサートを入れる

 

以上のステップで矢所を収束させる可能性が高いファインチューンが行えると考えました。

 

結論に至った概要を述べると、矢所の確率分布の分散が小さいほど的中は理論的に上昇します。

 

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※矢所の確率分布は体が同じように動いていれば正規分布に従うと仮定する。

しかし、実際は重力の影響などで横に扁平した分布になると考えられる。矢によるチューニングによって大きく抑えることができるのはこの横方向のブレ。

 

今回は矢所を収束させるためには身体の動きや使い方以外に道具のチューニングをもう一度見直すことが必要だと考えてこの記事を書きました。

 

主張としてはどんなにうまく身体を使って再現性を増して、精神論や気合いを突き詰めても、矢のバランスが弓にあっていないものを使っているかぎり矢所という確率分布の分散を収束させることが出来ないと言うことです。

(いつまでも再現性を崩さないのは精神論や気合いかもしれませんが、、今回は物理的なお話です。

気合いでジャンプして富士山を飛び越えるのが無理と言うような話です。)

 

たまに「初心者用の最初に買った道具でも20射詰まる」と言うことを聞くことがあります。

それはこういった道具の選定をしっかり行ったうえでの話としてはありうると思いますが、何も考えずに最適な道具の組み合わせになることはそんなに高い確率ではないので、しっかり考えてチューニングするのが無難でしょう。

 

 

ではなぜ矢のチューニングの必要なのか。

それは矢飛びの安定性を高めるという事が目的にあります。

 

先日メルカリで購入したカーボン矢に関する記事を書きました。

結論としては、ジュラルミン製の矢よりも矢所がまとまりかなり満足した結果になりました。

 

加えて、この一年で国体に出場するような選手の矢飛びを後ろから間近で観察する機会があって矢に関する一つの仮定が導けたのでそれをまとめます。

 

簡単に言うと、矢じりがある程度重くなることで弦から矢が離れる際に前側(的の右)に振られる減少を是正するという事にあります。

 

ただ大切なのは矢じりをインサートなどでいたずらに重く設定することではありません。

インサートを入れるだけでは矢の全質量が重くなり、左右のブレが是正されてもつけを上に向けなければ矢は的の下に分布するような結果になります。

 

また、会のときに矢がどの程度余れば良いかという問題にも関係してくると思います。

 

今回矢をチューニングすることで最適化したい問題は以下の図で表す現象です.

 

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矢の質量バランスが弓力と合っていないと上の図の上側で示すアーチェリーパラドクスの③から④の運動で矢が大きく振れる現象が発生します.

矢のチューニングで解決したい問題はこの振れ幅の最小化です.

ちなみにこの運動はiPhoneのスローモードで撮影することで確認ができるので試してみてください.

 

仮定として矢先が矢に対して相対的に重ければこの振れが小さくなるということをあげておきます.

相対的にというのは,シャフトの軽いものに1.5gの矢じりを使うのとシャフトが重いものに1.5gの矢じりを使うを使うのでは意味が異なるということです.

羽とシャフトが重ければ,矢じりも相対的に重いものを利用しなければこの振れる運動は制御できないと考えています.

 

これは国体選手の矢飛びをスローで見ていたときに感じた第一印象なのですが、離れの際に③から④の運動で絶対矢じりの位置がぶれずに的まで矢線の軌道が直線だったのです。

対して、多くの人は矢先が微細な振動をしながら的まで空中を泳ぐように飛んでいきます。

矢所の分布はこの矢飛びによる確率分布の発散の結果であるので、この振動が是正できれば上で示したような矢所の分散が小さくなることが期待できます。

 

本来であれば物理モデルを数式で組み立ててシミュレーションをして実験までやりたいのですが、そこまでの知識も技術もないのでスロー映像と経験から得られた知見で考察を行います。

 

まず矢の質量と重心位置について考えてみましょう。

矢の質量は矢じりとシャフトと羽根と矢筈の総和の重さで構成されています。

 

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このときの矢がある一点で釣り合う点が重心であり,その位置を矢じりの重さを相対的に判断する指標として用いることで矢のチューニングが可能になります。

 

矢の重心位置や質量は素材など多くのパラメータで変化するので、いくつか条件を固定して何を変えるとなにが変化するのか考えてみましょう。

 

・長さと素材が同じシャフトと羽根で矢じりの重さを変化させたときの重心位置

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→矢じりを重くすると重心は前に寄る

→矢の全質量が増加して矢所が下に下がる

 

・長さと素材が同じシャフトで重心位置が同じになるように羽根の素材と矢じりの重さを変化させた場合

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→羽根・矢じりに合わせて矢の全質量が増減する

→重い羽根を選んでしまうとバランスを取るのに重い矢じりを使って全質量が大きくなってしまう

 

・長さと素材が同じシャフトと同じ素材の羽根と同じ重さの矢じりでシャフトの素材や形状を変化させた場合

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→シャフトの素材をカーボンにすると矢の全質量がジュラルミンより比較的軽くなる

→シャフトの素材が同じならば杉形のものは一文字のものよりも重心が前に寄る

 

以上のように矢の素材を変えると重心位置や質量が変化するということがわかります。

 

矢のチューニングで重要なのは矢の完成時に全質量が何グラムくらいになっていてほしいのかということです。

 

これは個人的な意見ですが、矢の長さが90cmならば並の12kgで25g前後、14kgで27g前後、16kgで28g前後、18kgで29g前後くらいに収まると会のときに矢が地面と水平で矢どころは的の中心くらいになるのではないでしょうか。

※カーボン矢なら7620とか8023なんてありますが後ろの二桁が1メートルあたりのグラム数なのでプラス5g位(羽根と矢じり)が完成した矢の重さになります。

 

これは矢の長さと身長にも依存するので一概には言えません。

特にシャフトが10cmで約1gなので矢の長さを90cmを基準にすると先ほどの重さから加減1gくらいになると思います。

 

経験として私の身長が約170cm、並の16kgで95cmの30g(1gオーバーくらい?)の矢を使って、会のとき地面と矢が水平だと的の6時の辺りにまとまるのであえてやや上を狙って引いていました。(SSTを借りたときに水平に的心に飛んで感動した...)

また、弓力によって的まで飛ばせる矢の質量は引束によらずほとんど同じだと思います 。

 

ーーーー【追記】ーーーー

知り合いから96cmのEASTONの80-23で全質量28gをもらったのですが、会のときに水平で的心に飛ぶバランスでした。

(2020/1/13)

ーーーーーーーーーーーー

 

以上のことから矢を選ぶときは、まずは弓力にあった矢の質量を決定します。

そして質量予算に合わせてシャフト、羽根、矢じりの順に素材を選びます。

 

ポイント

1.カーボンを選択するとジュラルミンより2-3gは軽く出来ます。

2.杉形を選択すると同じカーボンでもより前方に重心を移動出来ます。

3.羽根は丈夫なものはやはり重く、ターキーなどは軽量ですが劣化しやすく矢によって矢飛びが変わるリスクがあります。

4.シャフトと羽根の重さを質量予算から引いてその重さを上限としてインサートを入れます。

 

☆ファインチューニングはこのポイント4においてインサートの量を変化させたときの矢所に合わせて最適なインサートを選定します。

 

次に矢の長さについて考察をします。

 

はじめに結論を述べると、会の時に矢先は約5cmほどはみ出るように矢の長さを決定するのが良いと考えています。

下のイラストで示した矢先の n cm の部分が少しはみ出ている方が矢飛びが安定すると個人的に考えています。

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 ここからはうまく根拠となる理由を示せないので、個人的な感想を書いていきます。

 

この余った部分は矢飛びに影響を及ぼすのかというのは弓道を始めた時からずっと考えていたことでした。

危険かどうかは別として、会の時にぴったり矢じりがはみ出るくらいに切り詰めてしまったら毎回同じ振動になるのではないかと考えていたくらいです。

実際切り詰めすぎて参段審査で結果的に受かってはいたのですが、審査員の方に注意を受けました。

 

あくまでも物理運動について注目した時にこのはみ出た矢がどのようなメリットを及ぼすのかと考えていたのですが、どうやら少し出ている方が解決したい矢先の振れをやや是正できるのではないかと直感的に考えました。

 

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上の図のように矢先がはみ出ていないと、ポンッと右前の方に矢が押し出される様に飛び出してしまうイメージです。

 

感覚としては、ややはみ出るほうが矢の振動を受け止めて③から④で矢の振動が固定端のように振る舞い、対して矢が切り詰められている場合は自由端のようになるためこのときのエネルギーの逃げ方の違いから重心位置と矢先の方向が変わってしまうのではないかと考えています。

 

固定端振動と自由端振動に関しては以下のホームページを参考にしてください。

固定端・自由端 ■わかりやすい高校物理の部屋■

 

 

これらをまとめると、

 

1.矢は長さをまず決める

2.スパインを合わせて、出来るだけ軽い素材を選ぶ

→シャフトの重さが確定

 

3.素材に合わせて矢羽を選ぶ

→矢じりとのバランスを考えて選択

 

4.矢の全質量が弓のキロ数に対応した重さになるまでインサートを入れる

→質量予算内に収まるように矢じりを挿入

 

という結論になります。

 

色々書きましたが、結局矢が収束するという経験的事実の方が重要ですのであくまでもヒントとして矢のファインチューニングを考えてみるといいかもしれません。

 

もう一つ、矢を変えたからと言って必ず矢所が収束するわけではありません。

道具の選択と調整は必要条件ですが、道具と射は表裏一体。

道具が良くても射が中途半端なら道具も活かせません。

 

しかし、射を向上させるなら道具の調整は必要不可欠だと私は考えています。

メルカリカーボンの謎

お久しぶりです。

弓道読本のまとめを1回飛ばして、今回は小ネタを一つ書きたいと思います。

 

弓道を始めてジュラ矢しか使ってこなかった私ですが、とうとうカーボン矢を購入しました。

 

それもメルカリで。

 

本当は杉形のSSTなんかを買ってインサートを入れて使いたかったけど、まあ高い。

 

そんなこんなで気まぐれでメルカリのカーボン矢を見ていたらある商品を見つけました。

 

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※イメージ

 

経年変化はあるけど新品のカーボン矢、8025という記述がありノーブランドということ。

値段は送料込みで12,000円。破格だ。

 

ぱっと見ると、黒いシャフトには光沢があってジュラ矢みたいである。

仮にジュラ矢でも破格であることには変わりないが、、

 

銘柄などの刻印なしということだが、そんなカーボン矢は聞いたことがない。

KCカーボンのようにも見えるが、質問のコメントには商品説明がすべてと言う回答のみ。

 

"カーボン矢 ノーブランド" で調べて見ると以下のブログが出てきました。

 

なんとなく徒然日誌:弓道 謎のカーボン矢


おそらく同一商品のことだろう。

 

なるほど、どうやらカーボン製ではあるようだが結局詳細はわからず。

 

謎は深まるばかり、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なので、購入しました。


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※とても丁寧な梱包でした、ありがとうございます。

 

ものとしては筈込みで全長106cmで羽込みで32gほど。

外径は8mmだったのでたしかに8025くらいでしょう。

 

ちなみに全体が均一な太さの一文字でした。

 

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タブーだとは知っていたがものは試しにとパイプカッターでカットしたところうまく出来た。


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表面にはカーボン特有の繊維の模様が見える。


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切断した端材をペンチで潰すとカーボン繊維が織り込まれているのがわかる。

 

 

これで念願のカーボン矢を手に入れたと思ったが誤算があった。

98cmとなるようにカットして、2.5g(?)の同封されていた2015用の鏃をつけたところ全質量が32g。

 

重すぎる、、、

 

そもそも丈夫な鷲羽で作ったジュラ矢(インサートなし、前釣り0.5cm)が全質量30gだったので、それよりも軽いものが欲しかったのだが結局ジュラ以上に重くなってしまった。

 

まあ羽がターキーなので、かなり前釣り(約3cm)になったのだけは救いだった。

(実際に試したところ、当たり前だがかなり矢所が収束するようになった。)

 

 

そして、今回購入してみていくつか推測できたことがある。

 

一つはこの商品の出処である。

 

配送は匿名であったが、営業所はどこで受けたのか知ることができる。

その住所は九州地方で海沿いのあたりだった。

 

こういった土地には弓具が買えるお店などは限られて来ると思い、その土地の弓具店を探したところ去年店舗を移転した武具店が出てきた。

 

もしかしたらそのお店の店舗の在庫や倉庫整理で出てきたものかもしれない。

 

 

もう一つ推測できることはこの矢の材料はなんなのかである。

 

購入の決め手のひとつにおそらく何かのOEM品であるシャフトではないかという憶測があったのだが、その答えはかなり早く出た。

 

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矢をカットしてさっそく矢飛びを試すのに道場で知り合いと引いていたのだが、どうやらその知り合いの使っていたSYカーボンというカーボン矢と酷似している。

自分のは80で知り合いのものは75であるため太さは違うが、繊維の模様がかなり一致している。

トップコートは使用感の差はあるがたしかに触った感じもかなり似ていた。

さらにSYカーボンは猪飼弓具店の雷槌ともOEMの関係だと思われる。

 

銘柄は刻印されていないがおそらくこれらと同等品なのではないだろうか。

 

それにしてもカーボン矢は初めて使うが、スパインがしっかりしておりジュラよりも矢所がまとまる感じがある。

正直、このメルカリカーボンは侮れなかった。

 

心配していた重量は自分の16kgの並にとっては重かったが、矢所にはほとんど影響がなく安心している。

 

でも、やはり杉形のカーボン矢へのあこがれは拭いきれない、、、

「弓道読本」を読む(2)

生理より見た射形の実態(p.22-p.27)

正整した骨格と均等に開いた上肢の静的均衡をもって基調根本体形とする

これはつまり,弓を持たない自然体の状態で背骨を真っ直ぐ伸ばして,両腕を均等に左右に開いて両肩(肩甲骨)を背面下方に引き締めた,弓力も受けていない骨格こそが自然体であり,これを基本とするということだ.
筋骨の運動は随意運動によって動かすことができるので,ベースとしてこの均衡バランスが取れた状態をできるようになることが重要だと述べている.

二本の線(p.27-p.30)

弓射は縦の線一本と横の線一本の二本の線の伸長でしかない

前の章で述べた均衡の取れた基本姿勢とはつまり縦横十文字の規矩であるということを述べている.
特に横の線は昔の射法のように馬手と弓手のバランスが異るものではなく,左右の筋骨が整い一本に伸長する自然体の射法であるべきだということを強調している. これと縦に伸びる脊柱の線が交わることが縦横十文字の規矩であり,この二本の線の完成に集約されなければならないと述べている.

自然体と十文字の伸び(p.30-p.33)

弓射には的という目標がある以上,射形の美ばかりでは意味がない

縦横十文字の規矩だけでは十分とは言えず,それに加えて自然体で正しく天地左右に伸合った結果として着いているところに飛んでくれると述べている. .
この伸合いを得るためには,体全体の自由を生かされるような取り懸け方と手の内(著者が考案した鉤の手の内など)が重要であると強調している.
この章から具体的に縦線の伸ばし方と体の横の線の使い方について示しているが,これ以上はこの書籍の本質的な内容になるため実際に書籍を購入するか,図書館などで借りて読んでいただくようにお願いいたします.

ここまでのまとめ

著者が伝えたいことは体に歪みのない状態で縦横に伸び合うことこそが自然体の射法であり,現代弓道で目指すべきものだと私は感じた.
かなり内容を端折っているが実際にはレントゲン写真などを交えてとても詳しく自然体の射法について解説している.
また,現代の全日本弓道連盟弓道教本に準拠しており,教本からたどり着くであろう具体的な一般解の一つを提示していると個人的に感じた.

一章からここまで読んでみて研究の内容は全て弓道教本に忠実であり,文量は多いがとても詳細に説明されているのでとても参考になると思います.

「弓道読本」を読む(1)

一応ページ番号などと対応が取れると良い場面もあるかと思うので記しておくと,中央公論新社出版の2012年再版発行(初版2006年)のものを私は読みました.
あらかじめ断っておくと,弓道読本は正面打起こしに重きをおいた内容となっています.

序文(p.1-p.2)

序文は「詳説弓道」の著者でもある小笠原清信氏によるものである.

近年従来の弓術に基づいたものではなく,体育学に基づいた弓道を見直す時代がきている

近代の弓道では「自然の流れに置ける動きの美」というものを科学的に追求するのが大切であり,弓道読本は著者である唐沢氏が長年取り組んできた研究がまとめられている.
そして,この内容は将来の弓道に多大な示唆を与えるものとして功績が極めて大きいと評している.

そのため新しい時代に生きる弓道家に一読を薦めたい

という言葉で弓道読本の序文を締めくくっている.

まえがき(p.3-p.5)

前書きでは唐沢氏の来歴とこの本が何を目指すのかということを書いている.
著者は日置流印西派に入門していたが,その後弓道を修行する者は流派を問わず小笠原流を学んでおくべきだという考えから小笠原流でも弓道を行い重藤弓の免許を受けたということを述べている.
このことは後に手の内に関する記述で関わってくるが,斜面打起こしからもインスピレーションを受けながら正面打起こしで成果をあげる手の内の整え方を提案している.

"自然体"の射法こそが現代のあるべき正しい射法である

印西派における射法というもの左肩を下げて,馬手肩をあげて固める形であり,結果として生まれる小離れの射法が良しとされるという.
しかし,このように流派による射法ではなく近代では体育としての弓道が求められている.
著者は弓射に作用する人体の生理的作用に適した射形というものを研究した結果,人間に本来自然に備わっている人体の働き,生理的,心理的作用を基礎とした射法をまとめることができたということである.
これこそが自然体の射法であり,その研究成果が大方の参考となれば良いということで締めくくっている.

あるべき現代の弓道(p.12-p.13)

すべて飛び道具の主たる目的は,目標に射当てることにあるのは今も昔も変わっていない

今も昔も的中を生み出すのが弓道であるが,単に弓を引いて的に当てれば良いというわけではないことを著者は強調している.
そして現代の弓道において基本であるのは"縦横十文字の規矩"であるということを研究の結果から明らかになったと述べている.
もちろん全日本弓道連盟弓道教本からもこのことはもっとも重視すべきことだと解釈できる.

自然の流れにおける動きの美,これを生み出すのが"自然体"の射法なのである

しかし縦横十文字が形成されるためには筋骨と気息の働きなど,形の美しさだけでなく内容が伴わなければ生まれないという.
これらが自然のうちに行われることが美しいのであって,これこそが弓道における美であり,その美を生み出すのが自然体の射法であるという言葉で締めくくっている.

昔の射法(p.14-p.22)

弓道は常に進化してやまないものでなくてはならない

これは弓道教本からの引用であるが,この本の中でも引用されている.
著者が学んでいた日置流印西派も元は日置流という一本の親木から分岐したものであり,常に変化を続けてきた結果様々な流派が生まれたということを言っている.

射の眼目は,自然の理を動作の上に表現することである.故に自然を無視しては射は成り立たない

現代における弓道の目的は学生にとって体育的となり,精神的愉悦に浸ることのできる---高い指標を持つものであるということだ.
そのため昔の射法と現代の射法で目的が全く異なると強調している.
弓道読本で重要なのはあくまでも現代弓道における自然体を習得するためにはどうするべきかということだ.

ここまでのまとめ

ここまで私の解釈で重要部分をまとめたつもりだが,要は自然体の射法を会得することが現代弓道における目的であるということが重要だと感じた.
私のブログで書いている内容はこの弓道読本における自然体の射法から始まっており,それに加えて弓矢がどのように動作するべきかということを組み合わせることで,より的中精度を高めるための考察を展開しているつもりである.

ここまではほとんどオリエンテーリングなので本質的な内容を扱っていないが,これからこの自然体の射法について掘り下げられていくことになる.
図書館やスポーツセンターの書籍に弓道読本がある方はぜひ一読をお勧めします.

「弓道読本」を読む

新しくブログの連載のような形で書籍の弓道読本/唐沢光太郎(著)をざっくり解釈しながら読み進んでいくと言うものをやろうと思います。

 

弓道の参考書籍として個人的に弓道読本をあげているのですが、人に薦めてもなかなかの文量と解釈の仕方がやや難しいのか敬遠されてしまう節があります。

 

そこでこの弓道読本の内容をざっくりと自分なりに解釈しながら要約するようなブログを書いてみようと思います。

 

またあえて弓道読本を選んだのにはいくつか理由があります。

 

一つはもちろん内容的に弓道が体系的にまとめられていて、人生において確実な弓道の基礎を作るためにこの本が十二分に役に立つと思うことです。

 

もう一つは世の中の弓道書籍において著者の考えや私見が詰め込まれた書籍が消えていっているという危機感からです。

これまで読んできた書籍はたくさんありますが、例えば

・みんなの弓道

弓道講座

・詳説弓道

弓道指導の理論と実際

・弓執るこころ

・正法流 弓の道

・続 弓道三昧(弓道三昧は未読)

その他、初学者用書籍や雑学書など。

宮城県の後藤弓具店でしか買えない個人出版の本も買いに行き、改訂版も読みました。

 

そんな中でここ10年間くらいの間に初学者用の書籍以外の本がどんどん絶版になっていっています。

 

ひとえに売れないから、が理由だと思うのですがそれで先人の知見が失われていいのかと言う危機感が私にはあります。

 

いろいろな本を読んでみて思ったのは、まず犠牲になるのは詳しく文章で書いてあるものです。

文量が多く解釈が難しければ、敬遠され写真や図解の多いものが選ばれるのはうなずけます。

 

次に著者の私見が多く含まれているものです。

私個人としてはあの値段の本の中に存分に知識とコツが書かれているのに絶版になってしまうのは本当に惜しいような気がします。

しかし、やはり参考書籍としてはどうとでも取れるような抽象的な表現で書かれたものが残っている印象です。

 

このことが実感できたのはみんなの弓道が絶版になり、著者の私見が大半削られてイラストを大量に増やし、文量を極限まで削った書籍が新訂版としてでたことです。

技を極める弓道という書籍です。

 

もちろんそれが参考にならないというわけではありませんが、リッチな情報を削っているので結局どうすればどんな射になるのかと言うのはわからないし、他の書籍と書いてあることが変わらずなにも面白くありません。

 

このブログを始めたきっかけも誰でもいいから詳しく深い考察をする他人の知識を参考に見てみたい、ならば自分からやろうと思い始めたものです。

今回の記事は貴重な参考書が失われていくこの現状への一つの抗議活動として今回の連載をしようと思います。

 

またこれは普段の弓道活動にも言えることですが、読み手や指導を受けるもののキャパシティを勝手に判断してレベルを落とした(?)抽象度の高い指導をするというのは相手に失礼だと言う思いがあります。

これは自分のブログがと言う話ではなく、出版社の判断や一般的に誰かが誰かを見ると言うときにも当てはまることです。

 

わからなければ聞けばいいし、それで答えられないほどの安直な指導や知識など情報として破綻しています。

その会話から発展して弓道に関する考えがお互いに昇華する過程に私は弓道をやっている楽しさや意味を感じます。

 

もし仮にそのときに伝わらないことがあっても、わからない知識や曖昧なことがあればきっと教わる側は自分で調べ、考え新たな何かを発見するはずです。

教える側もまた、もっと噛み砕いて考えて教え方を模索し、その先に真の理解があるのではないでしょうか。

 

そのためこのブログでも解釈をしながら要約しているはずでも多少文量が多くなってしまうかもしれませんが、ご了承ください。

 

私のブログでなにか曖昧なことがあり、議論を深めたいと思われる方がいらっしゃればどうぞお気軽にコメントなどよろしくお願いします。

 

それではいざ弓道読本の世界へ。

 

 

6つある肘の型についての考察

閉鎖を宣言しましたがずっと公開するか悩んでいた記事をせっかくなので公開しようと思い追加で公開しました。

 

また、2019/3/21に4種類と記述していた肘を6種類に修正いたしました。申し訳ありません。

 

内容は以前公開していた記事をベースに修正を加えて改訂したものとなっています。

 

今回の記事は医療の知識などほぼ皆無の素人が書いておりますので鵜呑みにはしないようお願いいたします。

あくまで物理的な構造の考察をお楽しみいただければ本望です。

 

弓道をはじめてからずっと疑問に思っていたことに、人によって会の形が違うのはなぜかと言うのがありました。

特にⅠ部校にはWの様に肘が若干肩線よりも一度下がる形状の人が多い気がして不思議でした。

もちろん思い過ごしかもしれませんが。

そうして人の肘を観察するうちに肘には大きく分けて4タイプあるということに気が付きました。

 

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まずいわゆる "猿腕" と呼ばれる "可動範囲が180度以上ある肘" です。

これでまず二種類ですね。

度合いにもよりますが、肘の可動範囲が180度で止まるひとと割合は半々くらいでいるのでしょうか?

 

 

そして肘にはもう一つバリエーションがあります。

それは肘を展開したときに下図の赤いラインで示したように正面から見ると上腕骨の延長上に拳がない骨格です。

便宜的に「角腕(かどうで)」とでも言いましょうか。

 

−−−−−−−

調べ方がわからず適当に「角腕」などと言いましたが外反肘というらしいです。

また、その逆の内反肘もあるらしいです。

−−−−−−−

 

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これは生まれつきの関節の付き方で変化すると思います。

 

この外反といわゆる猿腕との組み合わせでざっと4タイプに大別できると思います。

 

ただ内反の場合もありますので理論上は6タイプ存在しますが、私の経験上では内反肘の方は見たことがありません、、、

 

ちなみに私はほんの若干猿腕気味の内反も外反もない直線のタイプです。

 

もし人の射を参考にすることがあったり、人に教えることがあるとしたらこの肘の違いを考慮したほうが射手にとって良い射というものを見つけやすいかもしれないですね。

 

ちなみに猿腕ではなく、外反肘である射手こそが会でWの形に見える秘訣なのではないかと思っていました。

 

以上です。

 

−−−−−−−

おまけ : いわゆる猿腕において可動範囲の違いが生まれる要因の考察
 

 まずなぜ腕の可動範囲が人により異なるのかを人体骨格のイラストで考えてみましょう。

まずは左手腕を正面から見たときを例にします。

 

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肩から手首にかけて上腕骨、尺骨、橈骨(とうこつ)の3つの骨で構成されていることがわかります。

 

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橈骨と尺骨は三角形を引き伸ばした形をしており、片方が蝶番のようになり片方は軸受のようになることで腕の捻りなどの立体的な動きを可能にしていることがわかります。

 

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ここで肘と呼んでいる箇所がどこに相当するかと言うと、尺骨の端(蝶番側)が肘の角であることがわかります。

 

この部分を肘頭(ちゅうとう)と呼び、この肘頭がはまる上腕骨のくぼみを肘頭窩(ちゅうとうか)と呼びます。

 

可動範囲は腕を伸ばしきったときの上腕骨と尺骨の成す角度で決まります。

 

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※紫のラインが肘頭窩は深い場合、オレンジのラインは肘頭が短い場合を示す

180度以上の角度で可動する骨格とはこの肘頭の長さと肘頭窩の深さに起因すると考えています。

 

そしてひとつ言えるのは可動範囲が広いのは病気ではないということです。

人によって背が高かったり、低かったりそういった程度の違いだと私は考えています。

 

こういった個性を活かしてこそその人にとってのいい射が生まれるのではないでしょうか。

質問箱への回答②

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回答:

とても考えさせられる質問ですね!

簡潔に述べるなら見ていて違和感のない射をする人でしょうか。

具体的に言うならばもう引退された桜美林大学の大矢さんが一番好きです。見ていてほんとに美しい弓を引くと思います。

美しい射とは無駄な力がなく、縦横全ての方向が揃った左右が対称の射と言うことです。

また身体の力だけでなくて、離れる瞬間の弓の挙動やゆがけの使い方などにも気遣いが感じられて、あとにも先にもここまで美しい射は見たことがないです。

 


もう少し抽象的に答えるならば、引き方は正面打起しのほうが好きです。

斜面はまっすぐ押せますが縦の伸びが作りにくいのか、少々残心でバランスが崩れるように見えるのが苦手です。

昔はややうわ押しがかかって左右に扇の様に開くのが芸術的で綺麗だと思っていましたが、力学的な観点で見ると縦にブレがあるので的の一点に矢を当てることを考えるとそれは美しくないと思い今は左右に均等に竹の様に割れる射が好きです。

 


こんなものでしょうか。

本当は一方的に話すのではなくこういうテーマを語り合いたいです、、、

 

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